中高年男性のEDは年のせいではない 1万人を診た辻村医師が語る身体からのサイン
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このコラムのポイント
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EDが全身の血管障害の最初のサインとして現れる理由
EDと男性更年期障害の関係性
EDの3大リスクファクターと日常で取り組めるセルフケア
ED(勃起不全)は、日本人男性の約3人に1人が抱える、ごく身近な症状です。2023年に日本性機能学会が25年ぶりに行った全国調査では、EDで悩む方は日本国内で約1,400万人いると推計されました。それにもかかわらず、多くの方は「年のせい」「気恥ずかしい」と片づけて、医療機関を受診せずに放置しています。
ただ、ペニス(陰茎)の動脈は全身でも最も細い血管のひとつ。動脈硬化はまずこの細い血管に症状を出します。つまり、EDは「心臓や脳の太い血管が詰まる前に出てくる、身体からの最初のサイン」かもしれない、ということ。EDを単なる勃起の問題と考えて見過ごすと、その奥にある全身の血管トラブルを取り逃がす可能性があります。
今回は、男性医療を専門とする辻村晃先生(順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 教授)に、中高年男性のEDについて伺いました。
ただ、ペニス(陰茎)の動脈は全身でも最も細い血管のひとつ。動脈硬化はまずこの細い血管に症状を出します。つまり、EDは「心臓や脳の太い血管が詰まる前に出てくる、身体からの最初のサイン」かもしれない、ということ。EDを単なる勃起の問題と考えて見過ごすと、その奥にある全身の血管トラブルを取り逃がす可能性があります。
今回は、男性医療を専門とする辻村晃先生(順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 教授)に、中高年男性のEDについて伺いました。
監修医師
辻村 晃(つじむら あきら) 先生
順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 教授
Dクリニック東京 男性専門外来 担当医
経歴
大阪大学で泌尿器科の研究・臨床をスタート。医師生活初期からアンドロロジー(男性学)、すなわち男性ホルモンに関わる男性不妊、性機能障害、男性更年期、前立腺疾患などの領域を中心に診療を続ける。2014年に順天堂大学へ移り、現在は浦安病院で診療と臨床研究にあたる。アンドロロジー専門で約30年、累計診療経験は1万人を超える。
学会活動・主要業績
- 日本性機能学会 2023年「男性性機能障害全国調査」臨床研究促進委員会 委員長(n=6,228、ED有病者数約1,400万人を推計)
- International Journal of Urology 2023年4月号にて、レノーヴァ治療484名の解析論文を発表(PMID: 36575829、患者満足度71.1%)
この記事で先生に伺ったテーマ
- EDは、全身の血管異常の最初のサインとして現れることがある
- EDは男性更年期障害の代表的な症状のひとつでもある
- EDの3大リスクファクターは年齢・糖尿病・喫煙、後者2つは生活習慣でケアできる
- EDが発症してから3年半で心筋梗塞が起こるという海外データもあり、早めの受診が重要
EDの背後に潜む動脈硬化、ペニスは身体の血管の「先行指標」!?
編集部
EDが重大な病気のサインになることはありますか?
辻村先生
EDの原因は様々あるので一概には言えませんが、ひとつの考え方として、全身の血管の病気の一症状として ED が現れているという見方があります。
具体的に言うと、全身に動脈硬化が強く起こっていて、血管が閉塞しやすい状況になっている。そうすると、ペニスの血管は非常に細いので、そこに先に詰まりが起こると、勃起力が落ちてきます。その後、もう少し太い血管、例えば心臓の血管にも動脈硬化が進んで詰まってくると、今度は心筋梗塞が起こる。そういったことは海外のデータでもたくさん言われています。
具体的に言うと、全身に動脈硬化が強く起こっていて、血管が閉塞しやすい状況になっている。そうすると、ペニスの血管は非常に細いので、そこに先に詰まりが起こると、勃起力が落ちてきます。その後、もう少し太い血管、例えば心臓の血管にも動脈硬化が進んで詰まってくると、今度は心筋梗塞が起こる。そういったことは海外のデータでもたくさん言われています。
辻村先生
ですから、ED を気にしないでいるうちに、実は心筋梗塞になりかけている、ということも十分可能性としてあるわけです。
あとは、EDのリスクファクターのかなり大きな因子として糖尿病があります。糖尿病をチェックされていなくて気づいていなかったけれど、実はEDで調べてみたら血糖値が非常に高かった、あるいは全身の様々な疾患からEDが起こっていた、ということが十分あり得ます。
EDの方は、心臓のことだけでなく、全身の健康診断的なチェックを受けられた方がいいと思いますね。
あとは、EDのリスクファクターのかなり大きな因子として糖尿病があります。糖尿病をチェックされていなくて気づいていなかったけれど、実はEDで調べてみたら血糖値が非常に高かった、あるいは全身の様々な疾患からEDが起こっていた、ということが十分あり得ます。
EDの方は、心臓のことだけでなく、全身の健康診断的なチェックを受けられた方がいいと思いますね。
「リスクファクター」とは
ある病気にかかりやすくする要因のこと(危険因子)。EDの場合は、年齢・糖尿病・喫煙などが代表的です。生活習慣で減らせるものと、年齢のようにコントロールできないものがあります。
ある病気にかかりやすくする要因のこと(危険因子)。EDの場合は、年齢・糖尿病・喫煙などが代表的です。生活習慣で減らせるものと、年齢のようにコントロールできないものがあります。
2023年 日本性機能学会 全国調査
EDで悩む方の推計人数:約1,400万人(前回1998年調査:1,130万人)/勃起硬度スコア(EHS)による有病率:30.9%(約3人に1人)
EDで悩む方の推計人数:約1,400万人(前回1998年調査:1,130万人)/勃起硬度スコア(EHS)による有病率:30.9%(約3人に1人)
EDと男性更年期障害は別物、ただし重なる部分も多い
編集部
男性更年期障害とEDの違いを教えてください。
辻村先生
EDは、男性更年期障害の症状のひとつになります。
男性更年期障害の概念は女性の更年期と同じで、性ホルモンの分泌が低下していくことによって起こってくる症状と考えられています。女性は女性ホルモンが少なくなる閉経の時期に更年期の症状が出ますが、男性には閉経がない。極端に男性ホルモンが低下する時期というのはないんです。
ただ、20歳を超えると徐々に男性ホルモンが低下してくることが分かっています。低下するスピードが速い人、あるいは何らかのストレスで急に分泌が悪くなった人には、男性ホルモン欠乏の症状が出てくる。それが男性更年期障害で、その代表的な症状のひとつがEDです。
男性更年期障害の概念は女性の更年期と同じで、性ホルモンの分泌が低下していくことによって起こってくる症状と考えられています。女性は女性ホルモンが少なくなる閉経の時期に更年期の症状が出ますが、男性には閉経がない。極端に男性ホルモンが低下する時期というのはないんです。
ただ、20歳を超えると徐々に男性ホルモンが低下してくることが分かっています。低下するスピードが速い人、あるいは何らかのストレスで急に分泌が悪くなった人には、男性ホルモン欠乏の症状が出てくる。それが男性更年期障害で、その代表的な症状のひとつがEDです。
男性更年期障害(LOH症候群)の主な症状
やる気の低下/イライラ/疲労感/睡眠の質の低下/性欲の低下/ED など
男性更年期障害(LOH症候群)の詳しい解説はこちら
やる気の低下/イライラ/疲労感/睡眠の質の低下/性欲の低下/ED など
40代以上の3割がEDで悩むのに、病院に通うのは1割未満という現実
編集部
40代以上の30%がEDを気にしているのに対して、病院に通っている方は10%に満たないと言われます。現場で、このギャップは感じますか?
辻村先生
日本人はそもそも性に対するアクティビティが極めて低い国民と言われています。性行為の回数も世界各国の中で一番少ないと言われていますし、ある程度の年齢になったら性についてどうこう言うのが気恥ずかしい、むしろそれを気にする方がかっこ悪い、と思われがちです。
中高年男性のEDの方であっても「年のせいかな」と思って気にされない方、あるいは「奥様との性行為もする機会がなくなっていて、別にEDでも日常生活に困らない」と感じる方もいらっしゃいます。さらに、困っていても病院に行くこと自体が気恥ずかしいと感じる方もいる。そんなことで実際の受診率はかなり低いのだと思います。
中高年男性のEDの方であっても「年のせいかな」と思って気にされない方、あるいは「奥様との性行為もする機会がなくなっていて、別にEDでも日常生活に困らない」と感じる方もいらっしゃいます。さらに、困っていても病院に行くこと自体が気恥ずかしいと感じる方もいる。そんなことで実際の受診率はかなり低いのだと思います。
編集部
「歳のせい」と諦めがちな EDですが、先生はこの風潮をどう見ていますか?
辻村先生
日本では、奥様との性的な関係がなくなっても非常に仲のいいご夫婦がたくさんおられます。そうした関係性のもとで、年配の方はEDがあってもなくてもあまり気にされない、という風潮はあると思います。
ただ、先ほどお話したように、中高年の EDは単に EDだけではなく、様々なところにつながっている可能性がある。男性更年期障害の一症状として現れている可能性もある。様々なチェックは必要になると思います。
ただ、先ほどお話したように、中高年の EDは単に EDだけではなく、様々なところにつながっている可能性がある。男性更年期障害の一症状として現れている可能性もある。様々なチェックは必要になると思います。
運動・サプリ・骨盤底筋、日常でできる男性力ケア
編集部
日常で取り組める男性力ケアについて教えてください。
辻村先生
一番簡単なのは運動だと思います。骨盤底筋という骨盤の底の筋力を鍛えるような運動をしていると、自然に勃起力が回復してくる、というのは昔からよく言われることです。
運動するのが大変という方には、それに匹敵するようなサプリメントもあります。男性力を上げるような成分が入った、ドラッグストアでも売られている亜鉛やビタミンなどを含むサプリメントを試してみる、というのも一つの手かなと思います。
サプリメントを飲もうという気持ち自体が、自分の健康状態を維持しようという意識が強い証拠ですからね。そうした意識がある方は、生活習慣もきちんと整えようとされる傾向があります。
あとは、医学的にどこまでエビデンスがつくか分かりませんが、ペニスや睾丸のマッサージで血流が維持できる、という考え方もあります。
運動するのが大変という方には、それに匹敵するようなサプリメントもあります。男性力を上げるような成分が入った、ドラッグストアでも売られている亜鉛やビタミンなどを含むサプリメントを試してみる、というのも一つの手かなと思います。
サプリメントを飲もうという気持ち自体が、自分の健康状態を維持しようという意識が強い証拠ですからね。そうした意識がある方は、生活習慣もきちんと整えようとされる傾向があります。
あとは、医学的にどこまでエビデンスがつくか分かりませんが、ペニスや睾丸のマッサージで血流が維持できる、という考え方もあります。
EDの3大リスクファクターは、年齢・糖尿病・喫煙
編集部
2か月禁煙をしたら朝勃ちするようになったのですが、メカニズム的にはどのようなことが起こったのでしょうか?
辻村先生
喫煙はEDの3大リスクファクターのひとつですから、当然そういうことは起こります。
私が患者さんにお話しするのは、EDの3大リスクファクターのナンバーワンは「年齢」。これはどうしようもなくて、年齢に逆らうことはできません。
2つ目は「糖尿病」です。先ほどお話したように、暴飲暴食をすることで起こってくるものですから、自分でコントロールしようと思えばある程度はできます。
3つ目が「喫煙」です。タバコは血管を傷めることがまず間違いないので、勃起力を維持しようとすれば、やはり禁煙です。これも自分の努力でできることですね。
年齢には逆らえなくても、糖尿病と喫煙の2つは生活習慣でケアできる部分があります。気になる方は、ぜひこの2つから取り組んでいただきたいですね。
私が患者さんにお話しするのは、EDの3大リスクファクターのナンバーワンは「年齢」。これはどうしようもなくて、年齢に逆らうことはできません。
2つ目は「糖尿病」です。先ほどお話したように、暴飲暴食をすることで起こってくるものですから、自分でコントロールしようと思えばある程度はできます。
3つ目が「喫煙」です。タバコは血管を傷めることがまず間違いないので、勃起力を維持しようとすれば、やはり禁煙です。これも自分の努力でできることですね。
年齢には逆らえなくても、糖尿病と喫煙の2つは生活習慣でケアできる部分があります。気になる方は、ぜひこの2つから取り組んでいただきたいですね。
EDの3大リスクファクター
① 年齢 ② 糖尿病 ③ 喫煙
このうち、糖尿病と喫煙の2つは生活習慣の見直しで対処できる範囲が大きい。
① 年齢 ② 糖尿病 ③ 喫煙
このうち、糖尿病と喫煙の2つは生活習慣の見直しで対処できる範囲が大きい。
EDで「気になる」と感じたら、一度受診を
編集部
最後に、EDが気になっているけど病院に行けない方へメッセージをお願いします。
辻村先生
「EDなんて年齢のせいだろう」「別に日常生活に困っていないからいいか」「奥様との性行為も少なくなったからいいか」、そんな風に思って見過ごしているうちに、実は全身の動脈硬化がどんどん進んでいて、やがて心筋梗塞が起こるというリスクがあります。
これはヨーロッパに有名なデータがあって、EDが発症した後3年半経つと心筋梗塞が起こってきたと報告されています。
これはヨーロッパに有名なデータがあって、EDが発症した後3年半経つと心筋梗塞が起こってきたと報告されています。
辻村先生
EDを気にしなくてもいいかと思わずに、最近EDで調子が悪いなと思ったら、糖尿病のことや、ほかのことも当然関係してきますので、医療機関を受診してチェックを受けられた方がいいと思います。
編集部より、関連する海外研究の紹介
辻村先生がふれた「EDから3年半でやがて心筋梗塞」という海外データに関連して、Montorsi らによるCOBRA trial(イタリア・285名を対象、European Heart Journal, 2006)があります。この研究では、慢性冠症候群の患者のうち93%が冠動脈疾患を発症する1〜3年前にEDを経験していたと報告されました。複数の海外研究をまとめると、EDは冠動脈疾患の発症を平均で2〜5年先行するとされています。
参考文献・出典
- 辻村晃先生インタビュー(Dクリニック東京メンズヘルス取材, 2026年)
- 一般社団法人 日本性機能学会「男性性機能障害全国調査」(2023年, n=6,228, 臨床研究促進委員会 委員長:辻村晃)。プレスリリース全文 / Medical Tribune報道
- Montorsi P ほか「Association between erectile dysfunction and coronary artery disease. Role of coronary clinical presentation and extent of coronary vessels involvement: the COBRA trial」European Heart Journal(2006年)。EDが冠動脈疾患を平均約2年(1〜3年)先行することを示した臨床研究。論文(Oxford Academic)
- Vlachopoulos CV ほか「Prediction of Cardiovascular Events and All-Cause Mortality With Erectile Dysfunction」Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes(2013年)。論文全文
- Dクリニックメンズヘルス ED治療ガイド






