『男性ホルモンが多いとハゲる』説、ウソ?ホント?
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このコラムのポイント
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男性ホルモン(テストステロン)が多いことが直接的にハゲの原因ではありません。
真の原因は、テストステロンが5α還元酵素によって変換された悪玉ホルモン(ジヒドロテストステロン)です。
薬の開発により、男性ホルモンを高めながらも薄毛のリスクを回避することが可能になっています。
『男性ホルモンが多いとハゲる』説、ウソ?ホント?
『男性ホルモンが多い=ハゲ(男性型脱毛症)になりやすい』
どこかで一度は聞いたことがありませんか。疑いなく信じている方も中にはいらっしゃるようです。
「薄毛の原因になるなんて“男性ホルモン”って悪いヤツなの?」「“男性ホルモン”は高めたい…けどハゲたくない…」
世の男性達をまどわす、実に悩ましいこの説…はたして医学的に本当なのでしょうか?
冷静に事実関係を整理してみましょう。確かに男性ホルモン(主に「テストステロン」)は、眉毛やまつ毛、そして髪の毛など“体毛の発育”に関係している…これは間違いありません。『男性ホルモンが多いとハゲる』と頻繁に言われるようになったのは、この事実からきていると思われます。
ですが…『男性ホルモンが多い=ハゲる』
この単純公式が成り立つなら、男性ホルモンが大量分泌される思春期〜30歳代の男性はみんな薄毛に悩んでいることになります。しかし、実際に若い男性の頭を見ると、そのほとんどがフサフサです。
つまり『男性ホルモンが多い=ハゲる』と言い切るのは短絡的、というより極端であることがわかります。事実、男性ホルモン「テストステロン」によって毛が抜けてしまうという研究データは今のところないそうです。
疑ってごめん、“男性ホルモン”たちよ…。
恐怖の黒幕◯◯◯、ついに判明!
“男性ホルモン”そのものが直接的に薄毛を引き起こすワケではないらしいことは分かりました。では、その恐怖の黒幕とは一体何でしょうか?
真実を知るカギは、私達の血液中に存在する「5a還元酵素」という物質にありました。
この酵素には男性ホルモン「テストステロン」を、強力な悪玉ホルモン「ジヒロテストステロン」に変換させる力があります(変換力には個人差あり)。
そして、この「ジヒロテストステロン」の濃度が高いと、毛嚢(もうのう※)が衰えて髪が抜けてしまうことに・・・!
(※参照:ヘアラボ https://hagelabo.jp/articles/dihydro-testosterone-control)
つまり、この「ジヒロテストステロン」こそが、悪の親玉であり真の黒幕だったのです。※毛根を入れている袋状の組織
さらに分かりやすく言うと、
男性ホルモン「テストステロン」×「5a還元酵素」=強力!悪玉ホルモン「ジヒロテストステロン」→薄毛の道へ!
上記のとおり、「テストステロン」「5a還元酵素」個々では悪さをしません。2つの掛け合わせが抜け毛発生のリスクを生みます。どちらか片方が多くても一方が少なければ、「ジヒロテストステロン」に変換される率は低くなるのです。
例:「テストステロン」多い×「5a還元酵素」少ない
=ハゲは進行しない→「テストステロン」でスネ毛・胸毛は多いが、髪もフサフサ(「5a還元酵素」が少ない)、という男性はたくさんいます。
結論:『男性ホルモンが多い=ハゲる』は、半分ホント・半分ウソ。
確かに男性ホルモン「テストステロン」が多いと薄毛になるリスクは高まりますが、直接的な原因ではなく複数あるリスク変数のうちのひとつです。他にも男性型脱毛症の原因は、遺伝的要素やストレス、睡眠不足、脂質の多い食事、喫煙など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
かつては、“男性ホルモン”を高める「テストステロン」補充の治療で、薄毛になる心配をする男性も多かったようです。もし「5a還元酵素」を多く持っていれば薄毛のリスクが高まるので当然の心配かもしれません。
しかし最近では「テストステロン」を悪玉ホルモン「ジヒロテストステロン」に変換しない薬、フィナステリドやデュタステリドの開発により、男性ホルモンを高めながらもリスクを回避することが可能になっています。
今日も着々と医学は進歩しています。まことしやかに出回る“男性ホルモン”や“メンズヘルス”に関する説も、一つひとつ事実をひも解いてみると面白い発見があるかもしれません。